
事業計画を策定する際には、自社の強みや競合環境の分析と並んで、市場分析が非常に重要な要素となります。
市場分析は、「どれくらいの市場規模があり、どのような成長性や需要が見込めるのか」を明確にすることで、計画の実現可能性や将来性を裏付ける役割を果たします。単にデータを並べるだけではなく、「なぜその市場を選ぶのか」「どのような戦略で参入・拡大するのか」を示すことが重要です。
今回は補助金申請時の勘所として、市場分析を行う際のコツと留意点を具体的に説明します。
市場分析の第一歩は、対象とする「市場」を明確に定義することです。
たとえば「飲食業界」と一口に言っても、外食・中食・宅配などのセグメントがあり、さらに和食・洋食・ファストフードなどに分けることもできます。市場を広く設定しすぎると分析がぼやけてしまい、逆に狭すぎると事業の将来性が限定的に見えてしまうため、事業内容との整合性を意識した適切なスコープ設定が大切です。
市場分析において最も重視されるのが、市場規模と成長性のデータです。過去数年の市場規模の推移、今後の成長予測、主要プレイヤーのシェア構成などを可能な限り数値で示すことで計画の客観性が高まります。データは、業界レポート、政府の統計資料、シンクタンクの調査など、信頼性の高い情報源から入手することが望ましいです。
全体の市場を把握したあとは、自社が実際に狙う「ターゲット市場」を明確にすることが必要です。市場全体が拡大していても、自社がその中のどの層を取り込むかによって戦略は大きく変わります。
たとえば、「20~30代の都市部在住者で、健康志向の高い層を主要顧客とする」といったように、明確な顧客像を描くことで、戦略の方向性が定まり、説得力のある事業計画につながります。
市場分析では、単なる需要動向だけでなく、外部環境の影響も考慮することが重要です。たとえば、政治(Politics:規制緩和や補助金政策の影響)、経済(Economy:景気動向、為替、インフレ率)、社会(Society:消費者意識の変化、人口構成)、技術(Technology:新技術やデジタル化の進展)の観点から市場環境を整理するPEST分析を活用すると効果的です。
市場分析では、単に「市場は成長している」と強調するだけでは不十分です。その市場が抱える課題や未充足のニーズを明らかにし、自社がそこにどう応えるかを説明することが重要です。
たとえば、「市場全体は伸びているが、地方では供給が不足している」「高齢者層向けのサービスが不足している」など、課題と機会をセットで示すと、事業の方向性がより具体的になります。
事業計画が実行される数年後の市場環境を想定し、どのような変化が起こり得るかを予測することも重要です。人口動態、技術革新、法規制の変化などが市場に与える影響を考慮することで、将来を見据えた柔軟な戦略を立てることができます。
市場分析で用いるデータは、信頼できる情報源から取得することが前提です。出典を明記していない数字や根拠の曖昧な予測は、事業計画の信頼性を損ないます。
たとえば、「経済産業省の統計資料によると~」といった形で、情報源を明確に記載すると、審査員や投資家も安心して評価できます。
市場分析は、市場を適切に定義し、規模や成長性を定量的に把握したうえで、ターゲット市場を明確に設定することが第一歩です。さらに、外部環境も把握し、市場の課題と機会を整理することで、事業の方向性がより具体的になります。
市場を的確に読み解くことは、単なる計画の裏付けではなく、将来の成長戦略にも役立ちます。市場分析をしっかりと行い、計画の実現可能性と展開力を高めることが、成功への大きな一歩です。
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