2023年3月30日より、事業再構築補助金の第10回公募が開始していますが、大幅な要件変更がされています。今回は、主な変更内容について解説します。
まず大きな変更点として、「通常枠(最大8千万円、補助率2/3)」がなくなりました。「成長枠」「グリーン成長枠」「卒業促進枠」「大規模賃金引上促進枠」「産業構造転換枠」「最低賃金枠」「物価高騰対策・回復再生応援枠」「サプライチェーン強靭化枠」の8つの特別枠という構成になります。
「成長枠」は「成長分野」に係る新規事業に取り組む中小企業等を支援する枠であり、「通常枠」では必須要件だった「売上高減少要件」が撤廃されています。しかし、どの企業も申請可能というわけではありません。事務局指定の「成長分野」に該当する業種・業態の企業のみ申請できます。補助額は最大7千万円、補助率1/2ですが、補助事業期間内に事業場内最低賃金を年45円以上引上げ、かつ給与支給総額を6%以上アップさせた場合、補助率が2/3にアップします。政府が重要施策として掲げている「構造的な賃上げ」の一環となります。
脱炭素化に資する事業を支援する「グリーン成長枠」は「スタンダードクラス(最大1億円、補助率1/2)」と「エントリークラス(最大8千万円、補助率1/2)」に分かれます。
「スタンダードクラス」は今までの「グリーン成長枠」の要件と同じですが、「エントリークラス」は研究開発期間を2年から1年に短縮する等の要件緩和がされます。「グリーン成長枠」のハードルを低くして申請者を増やすことによって、政府の「グリーン成長戦略」をさらに促進させるのが目的です。なお、「グリーン成長枠」も「成長枠」同様に賃金引上げ等を行った場合、補助率が2/3にアップします。「成長枠」か「グリーン成長枠」で申請した事業者は、「卒業促進枠」または「大規模賃金引上促進枠」の申請も可能です。
「卒業促進枠」では、補助事業終了後3~5年の間に、中小・中堅企業から中堅・大企業に規模を拡大した場合、上限額が2倍になります。「大規模賃金引上促進枠」では、補助事業終了後3~5年の間に、事業場内最低賃金を年額45円以上引上げ、かつ従業員数を年率平均1・5%以上増員した場合、最大3千万円が上乗せされます。
つまり、「成長枠」と「卒業促進枠」を申請すれば、7千万円×2倍=1億4千万円、「大規模賃金引上促進枠」であれば、7千万円+3千万円=1億円を受給できることになります。新規事業の他に、企業規模拡大や人材確保等も検討しているのであれば、これらの枠の併用をおすすめします。
「産業構造転換枠」は市場規模が10%以上縮小している業種・業態の事業者がその業種・業態から転換する場合の取り組みを支援します。補助額は最大7千万円、補助率2/3ですが、対象事業に「廃業費」が含まれる場合、上限額2千万円が上乗せされます。
「サプライチェーン強靱化枠」は海外で製造している製品や部品を国内製造に切り替えることで、国内で完結するサプライチェーン(原材料調達から販売に至るまでの流れ)の体制を強化する取組を支援します。ウクライナ侵攻等海外情勢が緊迫化し、円安が進行している中、脱海外依存を進めるための施策となります。補助額は最大5億円(補助率1/2)と極めて大きいです、補助対象期間も交付決定日から最大28カ月以内であり、他の枠より倍以上の長さとなります。
「最低賃金枠(最大1500万円、補助率3/4)」と「物価高騰対策・回復再生応援枠(最大3千万円、補助率2/3)」では「売上減少要件」が求められます。「最低賃金枠」では「地域別最低賃金+30円以内で雇用している従業員が全体の10%」という要件も求められますが、「物価高騰対策・回復再生応援枠」より採択率において優遇する旨が公募要項にも明記されています。
売上減少が必要でない「成長枠」、補助額が非常に大きい「サプライチェーン強靭化枠」等、自社が行いたい新規事業や自社の状況に応じて、どの枠で申請するか検討してみましょう。
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