ここ数年の大型台風の被害と昨年に始まった新型コロナウイルスの感染拡大は、住まい手の日々の生活を具体的に支えている住宅設備・建材の重要性とその適切さのあり方を、再認識する契機になったともいえる。
2018年に近畿圏、19年に関東圏で発生した大型台風による住宅の被害は、それまで防犯の役割がメーンだった窓シャッターとしての適切なあり方として、台風時の強風に起因する飛来物から窓ガラスと室内を守るという〝防災〟対策としての要素を新たに加えた。
しかも注目すべきことはこの「台風の防災対策としての存在」が、窓シャッターを製造するメーカーや販売流通店による営業戦略としてではなく、報道などで大型台風の被害を見聞したエンドユーザーの間で自然発生的に求められたことが挙げられる。
エンドユーザーの間で高まった「台風の防災のための窓シャッター」ニーズに対応するためシャッターメーカーは昨年、それまで自社が扱っていた窓シャッターの耐風圧性能を、各社とも一気に数倍レベルに引き上げた新製品を発売した。
従来多くのメーカーで窓シャッターの耐風圧性能の仕様はほぼ1種類だったが、その既存性能を「標準仕様」、新たに耐風圧性能を高めた仕様を「耐風仕様」として発売、エンドユーザーのニーズに応える幅を広げた。
新型コロナウイルスの感染拡大は窓シャッターと同じく、まず、性能・機能面で住設・建材製品に新たなニーズを生んだ。
家に帰ってから家族の間で感染が広がることを防ぐという衛生上のニーズである「非接触」と「抗ウイルス」が、そうしたニーズの代表といえる。
前述のうち「非接触」の需要の高まりで住宅向け水回りメーカー各社で販売が好調なのが、手でレバーハンドルを操作することなく吐水できるタッチレス水栓だ。国内に加え海外でも需要が伸びており、ある大手メーカーではタッチレス水栓の国内生産能力を今春までに従来の約2倍とする計画を立てている。
また、広い意味での〝衛生〟に関する海外の動きでは、米国でトイレットペーパー不足から温水洗浄便座が着目され、温水洗浄便座のトップメーカーの米国における温水洗浄便座製品の販売が従来の2倍以上に伸びたことも特筆される。
「抗ウイルス」は従来、医療施設向けでは需要があったが住宅向けではほとんど求められてこなかった。このため大手建材メーカー各社の住宅向け製品の衛生上の訴求機能は主に「抗菌」に絞られ、抗ウイルス仕様を機能建材のメーンに据え扱っていたメーカーは皆無だった。しかし新型コロナウイルスの感染拡大を受け各社とも急遽、その品揃え拡充に全力を注いでいる。
また、新型コロナウイルスの感染拡大は性能・機能面のニーズ以外に、在宅勤務を快適に行うための間取りや、自宅における仕事とプライベートのオン・オフの切り替えなど、従来からあったソフト面のニーズをさらに高めたことも指摘できる。これらのニーズはタッチレス水栓と同じく、商材提案の切り口を変えることでエンドユーザーの要望に応えることが可能だ。
戸建住宅は多種多様な建材と設備機器で構成されており、トータルとしての性能・機能および品質は、採用される一つ一つの住設建材製品の性能と機能、品質の積み重ねで成り立っている。安全の確保と安心の提供として、製品を開発し供給する住設・建材メーカーの重要性が増している。