現在、キッチン・バスは、「料理をする」・「体の汚れを落とす」といった本来求められている機能に加え、システムキッチンは家族や知人との団らん促進、システムバスはリラックスする場としての役割を重視する傾向が強まっている。これからのキッチン・バスは、どのようなニーズが強まり、どのように変化していく可能性があるのか。キッチン・バス工業会が果たそうとしている役割と合わせ、大道正人会長に私見を聞いた。
――これからのシステムキッチンは、どのように変わる可能性があると考えているか。
大道 私が小さい頃、台所は日があまり当たらない北側にあることが多かった。冬には母親が寒い中で料理を作り、それを暖かい部屋に運んで初めて家族が食卓を囲み団らんが始まる――といったことが一般的だった。それが社会や生活様式の変化で、使いやすいキッチン、料理する人に優しいキッチンに変化していった。
今、フェアなどでシステムキッチンの展示を見ると、機能面・性能面はあるレベルを達成していることがもはや当たり前で、新たな競争として各社ともデザイン性に力を入れていると感じる。これは、かつては独立した間取りの中で使われていたシステムキッチンが、LDK化の進展で料理を作る人以外の人の目にも触れるようになったことが大きいと思う。
近年、システムキッチンに求められるニーズとしては、コミュニケーションを促進する役割の高まりがあるように思う。 かつてのシステムキッチンは、核家族世帯が使うことを前提に作られていた。しかし今は、特に大都市圏で言えることだが、一緒に住んでいた子どもが就職して独立したり結婚したりで家を出て行き、夫婦2人や、おじいさん・おばあさんだけで暮らす世帯が珍しくない。こうした世帯では子どもや孫が帰ってきたり親しい知人が訪れてくれたりする時などは、皆で団らんをしたいものだろう。