新規事業に挑戦するからといって、まったくゼロから始める必要はありません。むしろ、自社がこれまで築いてきた「強み=コアコンピタンス」を生かすことで、競合他社との差別化が可能となり、成功の可能性を高めることができます。今回は、自社のコアコンピタンスを見つける方法と、それを新規事業に活用する具体的な考え方について解説します。
「コアコンピタンス」は、単なる得意分野や技術力ではなく、「他社には真似しにくく、顧客にとって価値が高い、自社独自の強み」のことを指します。たとえば、優れた製造技術、長年にわたる顧客ネットワーク、独自のノウハウ、ブランド力、人材育成力などが該当します。
重要なのは、「競争優位性があるかどうか」という視点です。「特定の業界に深く入り込み、競合が簡単にアクセスできない顧客基盤を持っている」といったレベルの強みがコアコンピタンスとなります。
コアコンピタンスを見つける第一歩は、会社の持つ資産や強みを徹底的に棚卸しすることです。
「技術力・ノウハウ=自社にしかできないこと、独自の技術、熟練した職人技」、「顧客基盤=長期的な信頼関係を築いている顧客、独占的な販売ルート」、「ブランド力・信用=地域や業界での認知度、信頼の厚さ」、「人材・組織力=現場対応力、課題解決力、チームワーク」、「仕組み・プロセス=効率的な業務フロー、品質管理体制」などのような観点で洗い出すと整理しやすくなります。「強み」だけでなく「当たり前だと思っているけれど、実は他社にはないもの」にも着目することがポイントです。
自社の強みを社内だけで見極めるのは難しいこともあるため、顧客や取引先の声を聞くのも有効です。また、長年の取引先やリピーターが存在する場合、それ自体が大きなコアコンピタンスであることも少なくありません。外部の視点を取り入れることで、社内では見落としていた価値を発見できる可能性が高まります。
競合分析も欠かせません。他社と比較して、何が優れているのかを明確にすることで、自社独自の強みが際立ちます。たとえば、競合他社が価格で勝負している中で、自社が品質で評価されているのであれば、それがコアコンピタンスになります。
強みをどう生かすか
強みを発見したら、それを新規事業にどう生かすかを考えます。重要なのは、「既存事業の延長線」ではなく、「強みを他の領域にも応用できないか」という発想です。
たとえば、「高い加工技術→新しい製品分野への展開」、「地域密着の販売ネットワーク→他業種の商品を販売する仕組みへの転用」、「ITシステム開発力→自社向けから外販ビジネスへ展開」など、強みを他の市場や事業に応用することで、競合が追随しにくい独自のポジションを築くことができます。
コアコンピタンスは、社会の課題や顧客のニーズと結びつけてこそ、価値が生まれます。たとえば、環境対策、デジタル化、高齢化対応など、現在の社会課題と自社の強みを掛け合わせることで、新規事業の方向性が見えてくるケースが多くあります。
強みを「どう活かすか」を考える際は、「顧客や社会がどのような課題を抱え、自社はその課題にどう応えられるのか?」という視点が鍵となります。
新規事業に結び付ける際には、既存の強みをそのまま使うだけでなく、「強みをさらに磨き上げる」意識も大切です。たとえば、「熟練の職人技をデジタル技術と組み合わせる」、「既存のネットワークをオンライン化して広げる」といった形です。
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