【まちづくり月間特集2021】今泉あらい湧水公園周辺地区=区画整理で生まれた町、新旧住民で景観を維持管理

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神奈川県秦野市内にある今泉あらい湧水公園周辺地区(諏訪町自治会)が、2020年度に行われた第16回住まいのまちなみコンクールで最高賞となる国土交通大臣賞を受賞した。「湧水公園を拠点に生物、農地、歴史文化などの資源を大切にしながら新旧住民が一緒に環境を育てている」点が評価された。地権者で組織する土地区画整理組合によって2016年10月、新たに創出された全長150メートルほどの細長い水辺の公園は、地元自治会が中心となって年4回、地域住民による清掃活動で美観を維持してきた。今では近隣保育園の散歩ルートや小学校の課外学習、通勤・通学路、水神(すいじん)様を祀る祠など、地域住民の日常生活に溶け込んでいる。

分譲住宅開発は、住友林業が担当

今泉あらい湧水公園は、小田急小田原線・秦野駅南口から西に約400メートル・徒歩5分の分譲住宅地の中心に位置している。公園を囲むように建てられた分譲住宅は住友林業(東京都千代田区、光吉敏郎社長)が手掛けた。敷地には剪定・管理された様々な樹木が植えられ、隣地を仕切る高い塀はなく、連続する石畳や花木が住宅同士をゆるやかにつないでいる。

区画整理によって公園や道路、住宅などが整備されたのは5年前。記者が見学した5月中旬は雨の平日だったこともあり、歩行者はほとんどおらず、まるで湖畔に佇む静閑な別荘地のようだ。「それまでは背丈よりも高い葦などの雑草が群生し、手つかずの畑が広がっていた」と、同地区の土地区画整理組合理事長を努めた三杉克篤さんが以前の景色を教えてくれた。

約3万2千平方メートルの駅近の耕作放棄地で、地権者は19人。1979年に都市計画決定された区域の一部だが、土地の整備方針が定まらず、事業は2012年まで動かなかった。しかし、地権者でもある三杉さんが「次代を担う子どもや孫のため、もっと良い街にするべき」と、地権者の合意を取り付け、土地区画整理組合が発足した。

湧水は郷土の宝、次代に引き継ぐ

この地域の最大の特長は『湧水』。三杉さんが子どもの頃は、裸足で湧水に入り、どじょうを捕まえたりして遊んでいたという。しかし、湧水のおかげで田畑がぬかるみ、作物がろくに育たず、荒れた。湧水は濁り、雑草が茂り、視界は悪く、子どもが近づかない危険な場所となっていた。

組合員は「郷土の宝でもある『湧水』を守り、育て、引き継ぐ」ために、土地区画整理事業で公園を整備することに決めた。調査設計は日本都市整備、施工は清水建設、住友林業、住友林業緑化などが携わった。計画地の中央に水路と公園を配置し、公園を避けるように、周辺に道路を整備した。

区画整理事業で創出される公園の面積は、区画整理区域全体の約5%程度が一般的というが、今泉荒井地区の公園面積は、10・3%を占める3254平方メートル。地域のシンボルとして湧水を次代につなぐという組合員の強い決意が伝わってくるようだ。

年4回の清掃活動は、有志から地域主体に

公園が完成した直後の清掃や植栽手入れなどの管理は、秦野市の公園里親(アダプト)制度を利用した地域住民によるボランティアが定期的に行っていた。当初は、昔から住む人ばかり17人が参加していたが、今では新たに移り住んだ人も増え、32人で活動しているという。

さらに、公園がどんど焼きや納涼祭などの自治会主催の大きな催しの場として利活用されるようになると、「地域住民主体による公園の維持管理が望ましい」との自治会の考えから、20年4月には自治会を母体とする「公園愛護会」が創設され、ボランティア組織は愛護会の下で活動を続けることになった。

自治会が引き継いだ清掃活動は、コロナ禍にもかかわらず、幼児連れの家族や高齢者まで約180人の住民が集まり、清掃しながら交流を楽しんだという。

区画整理事業で生まれた新たな公園が、維持管理活動を通じて新旧の住民をつなぐ契機となっている。

2021年06月03日付6面に掲載
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2018年12月25日 住宅産業新聞社 編集部

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